格付ウォッチ
格付ウォッチは、格付変更の可能性が高まったこと及びその方向性を示すものである。格付ウォッチには、格上げ方向の「ポジティブ」、格下げ方向の「ネガティブ」又は格上げ・格下げ・据え置きのいずれの可能性もあることを示す「流動的」がある。しかしながら、格付ウォッチの対象となっていない格付でも、状況によっては、格付ウォッチを経ずに格上げ又は格下げとなることもある。
格付ウォッチは、通常、イベントを契機としたアクションであるため、一般に、比較的短期間で解除される。格付ウォッチの要因となるイベントは、今後予想されるものである場合と、すでに起こっている場合があるが、いずれの場合も明確な格付への影響は未定である。格付ウォッチ期間は、通常、さらなる情報の収集又は分析のために使われる。また、格付ウォッチは、格付への影響がすでに明確になっているものの、トリガーとなるイベント(例:株主又は規制当局の承認)が存在する場合に用いられることもある。そうした格付ウォッチは、通常、トリガー・イベントが解消するまでの期間又はトリガー・イベントの結果が十分に高い確度で予測でき格付ウォッチが解除可能となるまでの期間にわたり継続する。
格付ウォッチは、いずれの分析チームでも使用されることがあり、個別の発行体及び/又は債務の格付に適用される。投機的格付の最も低位のカテゴリー(「CCC」、「CC」及び「C」)では、信用特性の変動性が高いことから、ほぼ全ての格付がウォッチの対象となるべきことが暗示されているかもしれない。しかしながら、格付ウォッチは、これらのカテゴリーにおいても、格付委員会が、その対象とすることによって、特定のイベント又は脅威が最も適切に伝えられると判断した場合にのみ、選択的に適用される。
格付アウトルック
格付アウトルックは、今後1、2年のうちに格付が遷移する方向性を示している。財務等の動向に、現状では格付アクションを起こすほどではないものの、今後も継続した場合にそうなる可能性がある場合、それらの動向がアウトルックに反映される。アウトルックの過半数は、通常、「安定的」であり、これは過去に見られた1~2年間の格付遷移と整合的となっている。「強含み」又は「弱含み」の格付アウトルックは、格付の変更が不可避であることを意味するものではない。また、同様に、アウトルックが「安定的」の格付であっても、状況次第では事前にアウトルックを変更せずに格上げ又は格下げされる場合がある。時折、基本的動向に正と負の相反する強い要素がある場合、格付アウトルックは「流動的」とされることがある。
アウトルックは現在、コーポレート・ファイナンス(ソブリン、事業会社、公益企業、金融機関、保険会社を含む)及び米国以外のパブリック・ファイナンスの発行体格付、米国パブリック・ファイナンスの債券格付、プロジェクト・ファイナンスの債券の一部、保険会社財務格付、多数の国内格付尺度の発行体・債券格付並びに特定のストラクチャード・ファイナンス案件の格付における長期尺度に基づく格付に適用されている。アウトルックは、短期格付尺度に従い付与される格付には適用されず、また、「CCC」、「CC 」及び「C」カテゴリーの格付には選択的に適用される。債務不履行となった格付には、通常、アウトルックは適用されない。
格付ウォッチとアウトルックの付与時期の決定
アウトルックではなくウォッチを選択するにあたって、時期は有意であるものの、決定的なものではない。ある個別のイベントが、ほぼ明確で条件も確定している一方その発生時期が今後半年以上先である場合(例えば規制当局の承認プロセスが非常に長引く場合など)、アウトルックの変更ではなく、格付がウォッチの対象となる可能性が高い。
しかし、一連の潜在的なイベント・リスクが特定されており、いずれのリスクも個別にはウォッチの適用を必要とするほどではないが、全てのリスクが累積すれば今後1年から2年の間に格付が変更される確率が高い場合には、アウトルックの変更の方が妥当と判断されることもあろう。
また、ある具体的なイベントが特定されているが、そのイベントの条件や影響が概して不明瞭であり、長期にわたって高い実行リスクがある場合、例えば民営化が提案されているものの政治論争の的となっている場合なども、アウトルックの変更が妥当なこともある。